陸自の個人装具(2)

最終更新:2003.8.18

このページでは陸上自衛隊の旧型個人装具を中心に紹介します。何かの参考(?)にしていただければと思います(^^)
※各写真は、クリックすると別ウインドウで大きなものが表示されます。

なお、新型装具類(2型等)については「陸自の個人装具(1)」をご覧ください。

※基本的に、このページの情報はマスコミ等において公表されたもの、一般に公開状態となったものをまとめたものです。防衛上の機密に関する情報は一切扱っていません。
 


旧型装具について

ここに紹介する装具類は、1990年代半ばまで一線部隊等で使用されていたものです。主要な部隊では、1990年代末までに姿をほぼ消していますが、今でも一部、後方部隊や新隊員等の教育訓練で使用されています。

また、これらは作業服等の一部を除き、概ね自衛隊創隊時からの形状・デザインを踏襲し、大きな装備変更にあたる64式小銃の採用以降、長きに渡り大きな改善をされることはありませんでした。形状等で見る限り、米軍の第2次大戦〜朝鮮戦争頃の装備の影響を受けていると言えます。

<掲載装具一覧>

名称 名称
66式鉄帽 救急品袋
迷彩服 水筒
作業服(65式) 水筒覆い
作業外被 携帯シャベル(2つ折)
空挺迷彩服 携帯シャベル覆い
弾帯 半長靴
つりバンド(サスペンダー) 雑納
弾入れ(弾納・64式 1本用、2本用) 73式背嚢

 

 


66式鉄帽

米軍供与のM1型ヘルメット(第2次大戦から朝鮮戦争で使用のタイプ)をベースに、材料の国産化により1966年に採用された鉄製ヘルメット。米軍のM1同様にライナー(内帽)とシェル(外帽)の2重構造になっており、ライナーは樹脂、シェルが鉄で出来ています。

シェルの外見はM1に準じていますが、ツバの形状が若干異なり、「見る人が見れば」一発で区別できます。

ライナーの外見は米軍の物に比べ、内装をとめるリベットの数が極端に少ないのが特徴。また、材質も米軍の物が繊維に樹脂を浸透させて成形しているのに対し、樹脂の単純な金型成形で作られているため、質感が全く異なります。
内装も独特のものが採用されています。

ベースとなっているM1自体が、アメリカ人の頭部にフィットするように設計されているため、日本人が使用すると重心バランスの問題から、安定性が悪いという問題点を持っています。さらにライナーの内装も、構造上“落ち着き”が悪く、双方があいまって、訓練で激しい運動を行うと、帽体が激しくずれてしまうことが多々見うけられていたようです。
アゴ紐も官品はいまだに旧軍のような「ネクタイ式」の極めて“シンプル”なものです(ただの平紐)。隊員もほとんどがPXで“私物アゴ紐”を購入し、それを使っているのが現状です。

重量はライナーとシェルを合わせて約1.4kg。軽作業時はライナーだけを使用し、戦闘訓練や射撃訓練等ではシェルとセットで使用します。シェルとセットでの使用時は、その重さと安定性の悪さから、お世辞にも評判がよいとは言えないようです。

現在、88式鉄帽への更新に伴い、中古正規放出品が出回っているので、入手はミリタリーサープラスショップ等で可能です。ただし、最近品薄になってきており、徐々に入手が難しくなってきています。

※ライナーは軽作業用として支給が継続されており、平成13年度にシェル(外帽)使用を前提としない使用形態にあわせ、大幅な仕様変更が行われています。

写真(中古放出実物…アゴ紐はPX私物品)

66式鉄帽(実物)  ※ライナー写真はこちら

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迷彩服(作業服)

65式作業服(一般的に「作業服」「OD戦闘服」呼ばれている※写真)に迷彩生地を使用した、事実上自衛隊「初代」の迷彩服。この迷彩服は、現在ではほとんど姿を消しています(現在使用されている迷彩服はこちらです)。「迷彩服」として正式に採用されたのは1970年以降。デザイン・仕様はOD色のものと全く同じで、上衣のすそをズボンの中に入れるタイプです。官品の生地はビニロンと綿の混紡で出来ています。

この迷彩はその鮮やかな色(非常に薄い青緑、原色に近い茶と緑、こげ茶又は黒)の構成から“野菜売り場迷彩”などと評す人もいますが、一応、北海道の主要植生である熊笹の笹藪で効果を発揮するように作られています。実際、私の経験でも、笹薮の中ではかなり発見しにくいと言えます。その反面、その他の環境では迷彩の用を成さないことが多いのですが…(+_+)
使用する色は別として、パターンのとりかた(模様)は米軍の“リーフパターン”に似た大柄です。
この迷彩柄の制定の過程では、ベトナム戦争ものの映画で有名な“タイガーストライプパターン”を含め、数種の作業服が試作されたようです。でもなんで“笹薮でしか”効かない迷彩を採用したかは、私にもわかりません(^_^;) 
ただ、現在使われている迷彩服がこの問題を解決し、オールラウンドで使用できる極めて優れたものになったのも、この「初代」迷彩服での経験や教訓があってこそだと思います。

デザインは、個人的に嫌いではないのですが…。ズボンのカーゴポケットの位置も上の方にあり、個人的には使いやすく感じています。ただ、ポケットの数や容量、ファスナー式の上衣について、いろいろと意見があるのも事実です。

現在、新品はほとんど流通していません。多分、メーカーでも生産を中止しています。中古正規放出品も最近はあまり見かけません。一時はあれだけ(腐るほど)流通していたのに…。どうやら不用決定後に焼却処分されているみたいです(>_<)

尚、OD色の作業服(65式)は近日中に全て廃止になり、迷彩服2形と外見上同型の「作業服(迷彩)」が支給されるとのこと。

写真(PX品)

迷彩服※OD作業服写真

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作業外被

65式作業服と同時に採用された、作業(戦闘)用ジャケット。自衛隊では一般的に「外被」と呼ばれています。寒冷時における防寒の役割を果たすほか、少雨の際などは雨衣の代わりとしても使用します。この外被に迷彩のタイプはなく、全てOD色のみ(PX品で新迷彩生地を使用したものがありますが、正式には存在しません)。官品の生地はポリエステルと綿、麻の交織で出来ています。

デザインは米軍のM1951ジャケットをモデルにしたと言われていて、ポケットは4つ。通常の作業服より大型のポケットとなってます。前合わせ部はファスナー式。襟の背面部にはフード格納用のファスナーが付いています。付属のフードは同色の化繊生地で出来ています。
内張りはウエストより上の部分だけに化繊製の物が張られて、一応、これにより風の透過を食い止める構造となっています。また、脇の下には通気用の大型ハト目が3つ付いており、同部位の蒸れを防止するよう配慮されています。
なお、この外被には取り外し可能なキルティングのライナーが別途用意されていますが、寒冷地以外の部隊では支給されません。

この外被は上衣のみで、対応するズボンはありません。
また、OD色のみということで、迷彩服を着用した戦闘時には使用されないことが多く、積雪地以外では隊員はもっぱら、通常の作業服(迷彩服)の下にセーター等を着込むことで防寒を図っていたのが現状です。
小休止の際や、戦闘以外の作業又は日常の防寒用、若しくは雨衣の代用として使用されるのが一般的です。
なお、本格的な防寒用としては、白・OD色リバーシブルタイプの防寒服上下があります。

現在、新品はPX品が流通しています。中古正規放出品も比較的豊富に存在していますので、比較的安価で入手可能でしょう。

写真(PX品)

 

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空挺迷彩服

65式作業服の迷彩服空挺用バージョンです。一般用との違いが随所に見られ、空挺降下任務に適合した作りとなっています。一般用と同じく同裁断のOD色作業服(空挺服)もあります。

まず、上着で目に付くのは、左上腕のペン刺し。一般用には付いていないアイテムです。他にも袖口の止め方(スナップ式)、肘のあて布部分などの仕様が一般用と違うものになっています。また生地のカッティングも、より立体裁断が多用されており、体にフィットするように作られています(全体に一般用に比べ細身にできている)。
ズボンでは、一般用にはないハンドポケットが追加され、カーゴポケットは膝付近に。またカーゴポケットタブの止め方(スナップ式)に違いが見られるほか、臀部の生地が2重になっており、ハードな使用に耐える造りとなっています。

こちらも新品・中古とも最近はほとんど見かけません。入手は大変困難と言えます。

写真(PX品)   

 

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弾帯、つりバンド(サスペンダー)、弾入れ(弾納)等

自衛隊創隊当時からほとんど変化していない装具類。弾帯・つりバンド(サスペンダー)は綿、弾入れ(弾納)・携帯シャベル覆いなどのポウチ類はビニロンでできています。デザインは第2次大戦中の米軍のものに近いものになっています。弾帯は縦に3つ穴が開いたタイプ、つりバンドはX型のタイプです。
弾入れ・携帯シャベル覆い(2つ折タイプ用)・救急品袋は米軍の第2次大戦中のスタイルを見事に踏襲したタイプで、当時の米軍と同じ独特のスナップでふたをとめています。
弾入れは64式小銃の弾倉が1本入るタイプと2本入るタイプがあり、1本用はその下に救急品袋や手榴弾入れ等が付けられるようになっています(89式小銃用などもあります)。
救急品袋は横長タイプで、基本的に1本用弾納の下に取り付けます(もちろん弾帯にも取り付け可)。

弾帯への取り付けは、金具でハト目に引っ掛けるか、装具のループに弾帯を直接とおす方式で行います。弾入れだけはループに弾帯を直接とおす方式でしか取り付けられず、一度取り付けると、取り外しや組み替えは結構面倒なものになります。

水筒は本体、カップともアルミ製。
携帯シャベル(エンピ)は2つ折タイプで、弾帯に取り付けるのではなく、紐などを活用して、背中に背負うカタチ…携行方法が一般的でした(“カンタロウ”と呼ばれています)。

中古品は現在大量に放出中です。ミリタリーサープラスショップ等で比較的安価で入手可能です。ただし、新品は最近ほとんど見かけません。

写真(中古放出実物)

装具品一式(旧)

携帯シャベル各部

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半長靴

コゲ茶色の皮製。材質は確か牛革…(?)。

足首より上の編み上げは、ハト目ではなくフックに紐を引っ掛けるカタチで行います。
この方式は、慣れると脱ぎ履きが非常にスピーディーに出来るのですが、激しい運動をしたときに紐がゆるむと、フックから紐がはずれる問題があります。

足先が2重になっていますが、安全靴のように鉄板は入っていません(^_^;

中古品は比較的豊富に正規放出品が流通しています(中古の靴は水虫が怖いですが)。新品はPX品が一部で流通しています。

写真(PX品)

半長靴

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雑納

2型装具、戦闘装着セットが採用されるまで、使用されていた雑納。ビニロン製のテント生地で出来ており、結構丈夫です。
構造はいたって単純。見たとおりのシンプルそのものの作りですが、かえってそれが良かったりして…(^_^;)

写真(PX品)

雑納(旧)

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73式背嚢

2型装具、戦闘装着セットが採用されるまで、使用されていた1973年採用の背嚢。これもビニロン製のテント生地で出来ており、結構丈夫です。
写真向かって右側に携行糧食(缶メシ)、左側に携帯エンピ、中央手前の部分に飯盒を入れ組できるようになっています。腕の動きを楽にするストラップが着いていたりと結構よく出来ているのですが、横長のためバランスはイマイチだったりします。

写真(PX品)

73式背嚢

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その他の装具も、追って紹介していきます(近日公開!?)。


 

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