第4回:平成12年度「富士総合火力演習」レポート
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「富士総合火力演習」概要
富士総合火力演習は、昭和36年、近代火力戦闘の様相を富士学校やその他各種学校で教育を受ける自衛官に展示する目的ではじめられた教育展示演習(実弾演習)がその起源。その後、昭和41年から一部一般公開、昭和60年より一般公募により広く公開されるようになった演習です。
昨年は2日間の公開で約6万人が見学。最近はどうか知りませんが、以前は外国の駐在武官なども招待されていました。
東富士演習場畑岡地区で繰り広げられる演習は、約2億円/日の弾薬を使用し、その規模や見学者数からして“自衛隊最大の公開イベント”(…訓練ですが)と言えるでしょう。今年は9月7日(木)、9日(土)、10日(日)に一般公開されました。
平成12年度プログラム([ ]内は主な参加装備・部隊等)
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平成12年9月7日、“総火演”だ!!
この日は、自衛隊物好きにとって年に一度の最大イベント「富士総合火力演習」が公開される日。
0430、一緒に行く約束をしていたnobuさんから電話。「天気が〜っ、今日やるんですか???…」不安そうな声に窓の外を覗く…と、見事などしゃ降り。はじめて見学に行くnobuさんは中止になるのではと思ったようです。でも“総火演は雨天決行!!”と伝えるとホッとした声で「じゃあ、待ち合わせ場所で!!」。
それにしてもすごい雨。0600に自宅を出発。車両は当然、My“73式小型トラック”(^_^;) 0630に待ち合わせ場所でnobuさんをピックアップし富士へと向かいました。
今日は、先日の富士駐屯地祭の教訓(?)を踏まえ、万全の雨装備。でも、雨天決行とは言え、空挺降下やF-4の対地支援は中止だろうな…などと思いつつ、富士への車中、nobuさんと演習の見所などの談義に花が咲きました(…あのうるさいクルマでは“怒鳴りあった”の方が正しい表現かも)。富士に近づくと徐々に雨も上がり、一応曇天状態。
「良かったですね、日頃の行いかな!?」
いくら、万全の雨装備をしてきても、やはり雨の中の演習見学は相当大変なものがありますので、雨が上がりホッとしました。
クルマは指定駐車場の駒門駐屯地へ。駐車券をフロントに掲示しながら誘導に従う…と、いつのまにか駐屯地の外へ!? 会場の畑岡地区へと向かう一本道を直進することに。
「ひょっとして、このクルマだから演習車両と間違えられたのかな?」
「…そんな馬鹿な??」
…そんな会話を交わすうちに、駒門駐屯地行きのシャトルバスとすれ違う。
「・・・」
「まあ、会場まで行っちゃったら、無理やりでも駐車させてもらおう…」
と言った次の瞬間、駐車場が…どうやら“駒門第2駐車場”と言うらしい。思わず「良かった…」と声が漏れてしまいました(-.-)駐車場から会場の演習場畑岡地区まではシャトルバスで送迎。
初見学のnobuさんは言うに及ばず、総火演なれしているはずの私でさえ、シャトルバスの中ではワクワク・ソワソワ!!
なぜだか分かりませんが、何度来ても総火演ってワクワクしますね(^o^)
シャトルバスは約10分で会場に到着。その時、時刻は0830。スタンド席は既に殆どいっぱいでしたが、桟敷席はほぼ最前列を確保できました。
「ヨシヨシ、なかなかの位置だな…」
あとは、雨が降り出さないことを祈るのみです。
演習開始!!
1020、ついに演習開始!!
まずは前段演習。各種装備品の紹介と射撃動作の展示、一部は観客席の目の前で実際に射撃してくれます。
●観客席前での75式自走155mm榴弾砲の展示射撃(左)と64式対戦車誘導弾の射撃動作展示(右)
「ズドンッ!!!!」
火砲が発射されると鼓膜が破けそうなくらいの強烈な発射音がするのですが、その直後にどこからともなく赤ん坊の泣き声が…。やはり、赤ん坊にこの音はちょっと大きすぎるようです(^_^;)今年は61式戦車が退役を完了するとのことで、前段演習で74、90式戦車と共に紹介されてました。
射撃はしませんでしたが、運動性能を披露。…でもやはり40年前の戦車、74や90式と比べるのはちょっと可愛そうな感じでしたね。
しかし、90式の運動性能の高さにはあらためて驚かされました。
●運動性能の展示後、離脱する90式戦車。後方に74式戦車、そのさらに後方に61式戦車が…
化学防護隊が有毒物質の除染処理作業を観客席前で展示したあと、空挺隊員による空挺自由降下の披露。
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天候が悪かったので中止かと思っていたのですが、高度を下げて実施。隊員たちがパラシュートを操縦し、見事に観客席前へ次々と降着。観客から大きな拍手を浴びたところで、前段演習終了!!
次は、いよいよ総火演のメインイベント“一連の状況を想定”した実弾による展示演習です。
音楽演奏
演習の準備時間などの間繋ぎ(失礼…)として、音楽隊によるアトラクション演奏があります。
今年は音楽隊だけでも300名近い隊員が参加し、50周年の記念に華を添えていました。
中でも前段と後段演習の合間で披露した祝典序曲「1812」は秀逸!! 礼砲隊の105mm榴弾砲と見事なセッション(!?)を披露していました。
待ってました! 後段演習!!
1120、ついに後段演習開始! 演習場に「状況開始」のラッパが鳴り響きます。
後段演習は、まず敵の攻撃を防禦・撃破する段階、さらに守勢に回った敵を攻撃し撃破、戦果拡張し撃滅する一連の戦闘行動を実弾を使って展示します。まずは防禦戦闘。
主要地域を占領した敵は、我が方に向かってさらに攻撃前進を実施。これに対し我が方は特科火力、戦車、普通科部隊による前進阻止射撃、突撃破砕射撃により応戦。これを撃破します。
155mm榴弾砲FH70、120mm迫撃砲RT、79式対舟艇対戦車誘導弾、74式戦車、さらに陣地占領した小銃小隊がこの任務にあたります。
目標地域は砲弾、銃弾の雨嵐…う〜ん、あんな目にはあいたくないものです。
また、今年は地雷全廃を受け、新しい待ち伏せ兵器「指向性散弾」(いわゆる“クレイモア”)を投入。敵の前進に合わせて点火され、その威力を見せつけました。そして偵察活動。
ヘリコプターによる上空からの偵察活動の後、地上から偵察警戒車、オートバイ等による偵察、さらにレンジャーを潜入させ敵状の監視・要点の急襲が行われます。偵察結果に基づき、敵陣後方にヘリボンにより小銃小隊が降着。小銃・機関銃による戦闘で拠点を確保。敵の後方を遮断したのち、いよいよ本格的な攻撃が開始されます。
本来、偵察活動あと航空自衛隊のF-4EJ(改)による近接航空支援(地上攻撃)があるのですが、この日は天候不良で中止。ちょっと残念。
●偵察活動中の最新観測ヘリOH-1(左) 多用途ヘリUH-1Jからリペリング降下し敵中に潜入するレンジャー隊員(右)
●地上にて偵察活動にあたる87式偵察警戒車(左)とオートバイ隊員(右)
●UH-1HとUH-60JAで敵後方にヘリボン降着する小銃小隊(左) CH-47Jで小銃小隊支援のため空輸される120mm迫撃砲RT
●潜入した小銃小隊の行動を20mm機関砲で支援する対戦車ヘリAH-1S。画面右端中央で弾着の土煙が…
攻撃の下準備が完了したのち、主力が攻撃を開始!
攻撃にあたり、まずは特科部隊の火力支援。目標地域に次々と洩火(上空炸裂)、瞬発(地上炸裂)の砲弾の嵐が吹き荒れます。その効果を利用し、89式戦闘装甲車化部隊、90式戦車部隊がついに襲いかかります。
●進入し、稜線下で待機する89式戦闘装甲車(左)。一斉に稜線上に進出し目標に35mm機関砲を射撃(右)
●89式戦闘装甲車(奥)の射撃下、進入する90式戦車。戦車右上の2本の線は発射された35mm機関砲弾
●弾薬を装填した状態で急速に前進する90式戦車(左)。直後、停車前に120mm主砲を発射。1500m先目標に見事命中!!(右)
目標に次々と実弾が命中!!
敵は次第に追い詰められ、更なる後退をはじめます。
部隊指揮官は更なる戦果拡張を図るため予備を含めた全部隊を投入し、敵の追撃、撃滅を図ります。
●隊形変換のため移動する90式戦車(左) 次々と攻撃加入する90式戦車(右)
●敵陣地に同軸機銃を連射しながら突入する90式戦車と96式装輪装甲車(左は進出中の96式装輪装甲車)
●突入した部隊の煙幕援護下、追撃に移る74式戦車と展開部隊。演習のクライマックス
全部隊が追撃にかかった時点で状況終了!!
無事、敵の武力進行を排除したのでした(^_^;)
装備品展示
演習終了後、約30分の準備時間を経て装備品展示の開始。演習に参加した装備が所狭しと並べられます。
装備品はあっという間に黒山の人だかり…。
う〜ん、遠目でみると装備だか何だか分かりません(^_^)
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装備品展示が一段落したところで会場を後にすることにしました。
何せ、帰りのシャトルバス乗り場には長蛇の列。演習終了直後に並ぶと“1時間以上”待ちはざらですので、それくらいがちょうど良いところです。
帰りは平日であったこともあり、高速道路その他も大変スムーズ。
心配された雨も殆ど降ることなく、nobuさんも大満足していただけたようで、非常に楽しい思い出を作ることが出来ました。
来年も是非来ようと、心に誓うのでありました(^o^)!今年は創隊50周年記念ということで、演習の構成は例年以上にしっかりとしたもので、スピード感、迫力、気迫に満ち溢れたものでした。来年以降も、是非この規模で演習を維持していただきたいものです。
…難しいのかな?
今から来年の総火演が楽しみなH-SDFです(^_^;)
2000.9.17up